『くじ』
シャーリィジャクスンの短編集。
読むと嫌な気持ちになれるシャーリィジャクスン。
慣れると段々癖になっちゃうシャーリィジャクスン。
表題作でありこの本の中の最後の短編であるくじ以外は、ブラックユーモアぽいファンタジー設定すらない、描かれるのは普通の生活の中の日常の悪意。
それを頭に置かないでさらっと読むと、何の起伏も無い中身無しの短編となってしまうものもあるかもしれない。ただ、この短編の中では誰が「悪意」を、それもごくごく自然な形で持ち合わせているのかと気をつけながら読むとなかなかスリリング。推理小説の犯人あてみたいだなーん。
この作家の代表作のくじや、ずっとお城に暮らしてる、の方が人間の悪意がわかりやすく描かれているように感じられたので、やはりエンタメ読み物の完成型としては「悪意」も露骨に物語上に表出させた方がわかりやすいよなぁーと思いましたが、この短編集のほぼ全編に通じるさりげない悪意もまた、上手く使えば物語のスパイスに十分なりえまよね。
『黒猫・アッシャー家の崩壊』
去年生誕二百年!ポーの代表作を一揆読み。新潮文庫の新訳だよ、こちらはゴシック編。
黒猫、落とし穴と振り子が面白かったなー。この二つは小学生の頃に読んだ児童向け文庫内に入っていたので内容知ってたんだけどね、でも面白かった。
そんなわけで完全未読のアッシャー家の崩壊が一番の目当てではあったのですが、個人的には上記の二作ほどの衝撃はなし。アッシャー家から書かれた蘆屋家の崩壊を先に読んでいたもので、オチだけは先に知ってたようなものですが。
『モルグ街の殺人』
こちらはミステリ編。モルグ街以外は初めて読みました。
盗まれた手紙の隠し方は有名すぎて、初めて読んだけどもちろん知っていたよ。
ここから始まってブラウン神父のあれとかクリスティのあれとかかー。
黄金虫の暗号の解き方は感動してしまった。
その方法自体はサイモンシンの暗号解読で読んでた方法そのままなので既知でしたが、その方手法が自分が生まれる100年以上前の小説に書かれていることに感動なのです。
やっぱり自分ひとりで考えてたら、その人が凡人だろうが秀才だろうが天才だろうが猿だろうが、人間に寿命がある限りは考え出せる思考には明らかな限界範囲があるよね。先人が見つけた方法は色々と学ばないと損だよなー
てことで元祖はやっおぱり面白い。今回読んだ二冊には未収録の大渦巻への落下や、失敗作でもあるというマリーロジェも全集かなにかで今度読んでみたいです。

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