ネタバレたくさんありますよ!
注記ありのネタバレと注記なしのネタバレが混在してますご注意を
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
『毒薬ミステリ傑作選』
有名な作家の毒薬を使った短編ミステリーが載ってるんだけども、あとがきにも触れられてた通り一番面白かったのは編者の書いた序論だったなぁ 俺たち毒殺大好きだぜ!!と気分盛り上げてから本文 夾竹桃と大都会の一挿話が好き、あでも疑惑も面白かった。 なんてゆうか、男性作家のは毒薬事件で探偵出るよんものが多くて、女性作家のは毒殺当事者が教えてくれたお話よって感じが多かった気がする。以下何篇かの個別感想。 ちなみに「手早いやつ」はこの前読んだブラウン神父に入ってたばかりなので、今回は飛ばしちゃいました。 「疑惑」 は最後の数ページ前で犯人わかって、むしろなんでこれ私気がつかなかったのかなと思いました。ナインテイラーズも全然わかんなかったしなぁ。 夫の一人称、読者目線の感情自体が目くらまし、の、犯人外置きバージョン。犯人のミスリードと同時に被害者のミスリードも行っているという。動機が文中で明確に語られないのになんかわかっちゃう、な書き方もいいよね。 「偶然の審判」 は毒入りチョコレート事件の雛形。毒入り~内で会員の一人が使った推理がこの短編にも使われていたので、新しさはなかったのですが、これからあれが作られたのかーと思った。早い時期に読めてよかったな。 「夾竹桃」 は主役の一人称と、読んでる読者の感情を一致させないやつ。乙一のブルーみたいな感じ。ブルーを例に出したのはどちらも主人公が純真いじめられっこ系だから。主役が自分に害を与える対象者を責めずに、悪い人じゃないよ悪い人じゃないよと言い続けるんですが、旗から見たらどう考えてもあいつが元凶だよ。ブルーとの違いは結末で、これはあなたに似た人でよくある最後の最後での受身からの反逆。(こういう手法に名前無いんだろうか、勝手に自分用につけようかしら) ところでこういう読者と一人称の感情を意図的にずらして効果を出そうとするものには、後から実は違ってたよーな叙述系以外には、どんな傾向のがあるんだろう。これもブルーも主役の不幸を重ねることでの面白さとか胸糞悪さが出せるのでしょうが、これ主役の感情がいじめられっこ系以外には出来ないのかねぇ。あっても読んだときの印象が違うからすぐに思い出せないだけかもしれないけど。 「大都会の一挿話」 蝿はそのためですか!蝿はそのためですか! 「事故」 これはたぶん作者の意図とは違って主役の意識にのれなかった。のでクリスティーなのにびっくりしませんでした残念。あれで旦那を殺すとは思わんよ、危ないのはあなたよ。 あ、でもこれ応用で、読者には周りが主人公を狙ってるのがモロばれなのに主役だけ全然気がついてないコメディとか、そんな話あったら面白そうだね。 「ラパチーニの娘」 これだけ推理ものでない?のかな。三浦ミツカズの毒姫知ってる方は、そういう感じですよ。えろいのまでは行かないけど。 そして編集によるためになる注で同系統作品の補足。本当に俺たち毒薬大好きだぜ!!! クリスティの作品(有名なの)のネタバレもして感想書いてるから注意ね 『幻の女』 ウィリアムアイリッシュ代表作。 面白かったよー。以下覚え書き。すべてのネタバレをするつもりでいく 何も予備知識がなく読み始めたとしたら、殺人犯に仕立てられた男性が自分の無実を証明するために、アリバイを言ってくれるだろう女性を探すという、物語の目的が語られた1~2章くらいのとこで最初の面白さを感じると思う。 そこまでのあらすじは文庫の裏表紙にすべて書いてあるのでそれは知っていたとしても、1章には彼が女に会ってからの出来事が順々に書かれているわけだから、物語の目的を知っている読者はそれを読みながらこの人物は証人になるだろうか、この出来事が証拠になるだろうかと考えながら読むことが出来る。さらに物語は実際それらの証人と証拠を辿って進むのだから、その最初の提示からは読者は裏切られることなく読み進むことが出来る。 彼と警察による調査では女を記憶している者がいない。(彼目線から見ての不安の提示)(超自然的な違和感) 死刑判決 物語の転換、彼の敵であった警官からの再調査の提案(敵側の実力者が心情的に味方につくというカタルシス)、希望が見え反撃のターン、無二の親友による再調査の開始(彼は独房に入ったままで新キャラが調査を行う意外性、同時に読者目線が彼から親友に移る、)親友以外の人物による調査も同時に開始(主人公格の分散)若い女性が行動する人物に加わることで男性である親友よりも調査者(読者目線)への危険が増えサスペンス性の増加。 対象を追う内に脅迫者の存在が発覚、さらに殺される証人。 道筋が消えての絶望、最後の証拠の可能性、意外な犯人、そして意外な幻の女。 と物語の流れ 意外な犯人はアクロイド型なんで、そっちを知っている人にとっての意外性は低いが、さらにその直後追っていた幻の女が彼の愛人であることの方が本命のひっかけ。個人的にこの話の中でまったく予想出来なかったのはこの点でした。最後の章で彼女は本物の幻の女ではなく、真犯人をおびき出すための囮だということが明かされたが、ここで明かされる前に真犯人の行動解説で間を取っていることと、愛人が事件当夜外出中だったことがミスリードになって愛人=本物の幻の女と誤導している。この誤導だと登場人物紹介欄に幻の女が実は出ていたことになるし。 結局登場人物紹介欄を見ても幻の女がわからないのはいいなー 最終的に登場もしないのでこの点で不満がある読者もいると思ったが、彼の死刑を防ぐという当初の目標は達成されたためいいのかな。 犯人当てについては親友か警官かで迷う余地があったと思う。 証人・証拠についても読者に記憶に残りそうな証人と証拠、あんま残りそうもない証人・証拠 、てゆうかそれぞれの読者によって強く覚えている箇所は違うだろうので、意外な証人以外にも最初の聞き込みでも調査された証人にもあたることでさらに多くの人の盲点をつくのではないだろうか。すべての人が気にするとは限らないが、ひっかけは数もパターンも多いに越したことはない。 物語関係なくなった妄想では、探偵役が複数居るのは大切だなーと思った。さすがにもう、これが書かれた時期くらいのこういうメジャー系では、危機に瀕した主人公が助からないことはないだろうとわかるので、読みながら死刑執行のカウントダウンにハラハラはしませんが、このお話はそういうんじゃないですけど例えば主人公側の追跡者がもっと多く居る場合は上記のような男女による描き方の違い(追跡方法の違い、女性の方は追跡者自身の危険というサスペンス性)以外にも、物語の進行いかんで追跡者を殺すことでスリルをあおることが出来るので便利。(後複数居ると裏切り者も作れるし、そんで敵方の一部の味方化なんてべたべた) |